三重県南部の尾鷲市、三方を山に囲まれ、目の前には黒潮おどる熊野灘が広がる自然に囲まれた小さな町で、昔から漁業・林業と自然の恩恵で栄えてきた地域。リアス式海岸による天然の良港をもつこの地域は鰤(ぶり)においては日本の三大漁場とも呼ばれたほどで、日本有数の漁場としても知られています。独自の郷土食文化をもち、『さんま寿司』や『さんまの丸干し』そして『梶賀のあぶり』、高級珍味で有名な『からすみ』などがあります。
雨でも有名なこの地域。屋久島と肩を並べるほどの降水量があり、日本でも三本指に入ります。ただ、思っているような年中雨が降っているというイメージではありません。日照時間は東京となんら変わりないのです。ただ、一度に降る雨の量がすごいんです。尾鷲の雨はよくあめ玉ほどの大きさだとも言われてきたぐらいです。南向きの地形と裏手に大台系の高い山々が連なる地域だからこそなんだと思います。
また、この地方の山の斜面は急峻で土壌はやせており、木が成長するには厳しい自然環境です。
そのなかでじっくりと時間をかけて育った尾鷲ヒノキは年輪が緻密で、鮮やかな赤みがあり、強靱な良質の材木として全国的にも有名で、関東大震災のとき、尾鷲ひのきを使った家は倒壊しなかったとの話も聞くほどです。
2004年7月7日、世界遺産に登録された参詣道『熊野古道 伊勢路』もあり、古くから伊勢神宮と熊野三山を結ぶ交通路で、「伊勢へ七度、熊野へ三度」と呼ばれる信仰の路として、この尾鷲にも多くの巡礼者が訪れていたようです。峠には今もなお当時を感じさせる石畳が残っています。